最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)248号 判決 1948年7月14日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
辯護人豊田秀男同古田進の上告趣意第一點について。
原判決は所論の押收物件を犯罪事実認定の證據としていないことは判文上明白である。從って、假りに本件の捜索及び押收の手續に所論のような違法があったとしても、それは原判決に影響を及ぼさゞること明白であるから上告の理由とはならないものと言わなければならない。又辯護人においてその點の違法を主張せんとするには刑事訴訟法第四五七條によって抗告の途を選ぶべきであった。しかるに、その手續をとらないで上告をもってこの點につき原判決を非難することは筋違である。論旨はそれ故に理由がない。
同第二點について。
酒税法は、同法に規定する徴税の目的を全うするためその罰則の人に關する効力すなわち罰則の適用をうくべき人の範圍については何等特別の規定を設けていないから、刑法第八條により、刑法総則は酒税法罰則の場合にも適用せられることは明白である。從って、刑法総則第一條により、酒税法罰則は何人を問わず日本国内において罪を犯した者に適用せらるべきものである。論旨のように、その適用を特に酒類製造の免許を受け得る者に限定すべき理由は、毫も存在しないのである。されば、原判決が所論の法規を被告人等に適用したことはもとより正當であって、原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって、裁判所法第一〇條第一號刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。
裁判官庄野理一は退官につき合議に關與しない。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎)